桐生厚生総合病院
医学生さんで、自分の将来像がなかなか描けない、将来医師自体どうなるか?それさえ思いも及ばない、と常々感じている人は多いと思います。そうだとしても桐生厚生総合病院での学外臨床実習を体験された学生さんは、それに向けたそれなりの解答を得たり、その解答へのヒントを感じたりできたのではないでしょうか、またそうした問題やその解を考える必要性を知る機会に遭遇できたのではないか、と推測しています。
出生間もない幼い命が放つ香り立つ温もり、懸命に生きようとする呼吸や心拍の響き、どうしても応援したくなるか弱い生命そのものの尊さ、こうした経験は実際にその場で、直に肌で、五感で感じなければ知りえない貴重な体験だと思います。決してその命を疎かに出来るなどとは思いもよらない事ですし、手を差し出したくなる存在です。この自然な感覚が“医療の原点”です。そして困難な状況下で懸命に生きることに挑戦している小さな命を、病弱な命を何としても救いたいと、自らに課した強い使命感で自然と結ばれた人たちがいます。この人たちの集合が診療機能の一つに統合され、歴史の時を重ね進歩・改革を繰り返して先へ進む知識、技術となり、選択と決断による診療を強化してきました。その機能・効率を高める多様な才能同士の協力は、学問・研究として発展し、体系化されて、産科・周産期医療に構成されます。こうした総体を“医療”と考えます。現代の医療は多人数で果たされるまでに巨大化、複雑化し、専門家の出現を誘導しました。そして一層患者さんに寄り添う、やさしい医療に変貌してきました。
こうした医師になりたいと考え、具体的に決めてから、大学受験を乗り越えて来た方は少数でしょう。既述のように自分の将来を見通せる人などいないのですから。そこで医療とはどんなものか?何をするところか?何をしなければならないのか?などの答えが幾つもある問題に自ら取り組み、自分なりの答えを探し続ける。この過程を6年の時間を掛けて解き明かそうと試みるのが、医学生の仕事の一つだと思います。
“医師になる”を選択して医学生になったのですから、最終的には自分がどんな医療を展開したら患者さんのためになるかを深く考えて、自らの将来像を選択して欲しい。ただ百点を取るだけの医学生でなく、どこに居ても患者さんを見つめていける医師を目指す医学生でいて欲しい、と思います。そして当院で地域医療の最前線を見聞する実習に参加されたのですから、その経験の活用を図っていただきたい。皆さんが医師として活躍される日を待つ多くの患者さんが居ることを思い浮かべて、勉学に、実習に挑み、立ちはだかる幾多の難題も切り開く努力を続けて欲しい。
これからもそうした経験の場を提供していく病院実習を考えています。来年も再来年も、引き続いて医学生さんが当院での実習に参加されることを、期待しています。
医療は人が人を診る行為です。理想とするのは、診る立場にある人は医療人として自覚を持ち、日々知・技・体を研鑽し、弛まぬ努力を積み上げて、心が奢りで曇ることが無くする。そして診られる人の持つ様々な病状を、共感と熱意を支えに、手立てを尽くして治そうと奮闘する、即ち真摯に診療に励む。また診られる人には、人の成す行為に完璧はなく、結果は一人として同じではない、と理解し、かつ人事を尽くした診療結果は如何様であっても受け入れる覚悟を心得る。見方を変えれば、医療者と被医療者は、病からの回復を願う目標を共有し、相互の信頼を基盤にご自身や大切な人の診療に対立でなく、積極的に参画と協力をする。しかし、その成績は良いことだけではありません。期待通りにはならない場合もままあります。そうした総てを医療の現状と悟り、誠実になされた診療をまずは認める。達成できなかった結果は、次代の診療への課題として暖かく見守る。こうした関係を築きながら進む医療こそが、これからも期待される医療であり、次代の医療の目標とするものだからです。広く言われる、患者さんのための、患者さん中心の医療、そのものと思います。
そこで医学生さんたちに、考えていただきたいことがあります。将来の医療を担う医学生さんたちは、これからの自分たちが目指すべき医療とは如何に?そこでの医療人と被医療者の関係をどう描くか?ちょっとでも考えて、そしてこれから自分の進むべき方向を見つめて下さい。それは何時役に立つはずです。
どう考えようか、どう答えようか、と、皆目手懸りさえ掴めませんか?
こうした問いへの回答の一端でも、予感でも触れたい気持ちがおありでしたら、ぜひ桐生厚生総合病院で経験できる、短期滞在型臨床実習に参加してください。医療は人と人の間にあるものです。厚生病院での患者さんとの触れ合い、問診、診察、検査、診療等の体験から、自分の医師像が見えてくる時がきっとが来ます。実際の病院診療を見ている自分は、来る前の自分とは既に違います。病める人が抱く医療と医師への思いを知ってしまえば、社会の医師へ期待がおぼろげながらも描けてくるはずです。どう応えるか?それこそが医師になる自分への患者さんからの応援ですし、これからの医師になる自分の勉学への励みです。
是非桐生厚生総合病院での臨床実習をご活用ください。厚生病院の誰もが、そんな医学生さんたち、将来のお医者さんたちをお迎えすることは大・大歓迎です。