上野村へき地診療所
自分の将来をどのように考えていますか。はっきりと目標が決まっている人、迷っている人、まだ全然考えていない人、それぞれいることでしょう。学生の間に様々な経験をすることでやりたいことや疑問点がうまれ、将来の目標や自分の医師像がはっきりしていくのではないかと思います。私のメッセージを参考にして頂ければ幸いです。
- 上野村へき地診療所や業務について
- 病院と診療所の違いについて
- 診療所見学や実習について
1. 上野村へき地診療所は、人口約1350人の山村にある唯一の医療機関です。当診療所は保健福祉課(役場職員、保健師)、生活支援センター(高齢者集合住宅)、グループホーム、デイサービスが同じ施設内にある特徴的な施設となっています。下仁田・富岡・藤岡などにある2次医療機関へは車で30~90分かかるため、「へき地診療所」と定義されています。そのため、「かかりつけ医」として生活習慣病や慢性疾患の管理に村内の多くの患者さんを診察しています。さらに、心筋梗塞や外傷といった救急疾患の患者さんも診療所を受診します。限られた設備しかないため、問診や身体所見から病態を把握し、本人や家族の意向を汲み取りながら方針(当院での精査・治療・看取り、病院受診など)を決定しています。その他、学校医としての業務、介護保険に関連する業務など、病院勤務では経験できない役割と責任を担っています。
2. 診療所勤務では、病院での専門分化された業務とは異なる、やりがい・面白さ・難しさを日々感じることができます。病院とは違い、診療所では一人で診断や治療方針を決定したり、住民の健康管理のためにテレビ放送や診療所の広報誌を作成したり、自分なりの医療活動を行えます。患者さんとの距離も非常に近く、お互いにお互いのことを理解して、日々の診療を行っています。また、診療所を出れば、友人として患者さんと運動したり、食事したり、酒を酌み交わしたりしています。これらは病院勤務では経験できないことで、患者さんの気持ちの理解につながることだと考えています。
3. 診療所見学の際には、地域における病院と診療所との違いを知ってもらい、数年後に控えた医師としての勤務や地域医療連携などに役立ててもらえれば幸いです。また、見学は限られた時間しかありませんので、診療所実習を受け付けています。診療所実習では、一緒にいろいろ考えたり、診療を手伝ったりしてもらっています。疑われる病気やその治療だけではなく、どのような思いで患者さんは病院や診療所を受診するのか、どのような思いで診療所の医師は患者さんを病院へ紹介しているのか感じてもらえれば嬉しいです。へき地医療を行う人は少ないと思いますが、病院勤務時に診療所から紹介されてきた患者さんを診察する際に、診療所実習は必ず役立つと思います。