西吾妻福祉病院
当院は、群馬県北西部、西吾妻地域の基幹病院で2002年2月に開院しました。当地域には通年多くの観光客が訪れるため、地元の観光産業を支えるためにも当地域の住民のみならず、観光客の救急医療に対応することが当院の主な役割の1つです。またへき地支援病院として当地域の2次医療の完結と地域の保健・福祉・医療の充実が2つ目の役割であり、郡内唯一の分娩施設として産婦人科診療も継続しています。開院して13年が経ちますが、プライマリケアを中心とした医療ニーズに変わりはありません。しかしその内容は大きく変わってきています。当院における診療の特徴のひとつが診療科の垣根をなくした総合診療体制を主体としていることです。もちろん専門的な診療が必要な場合はその領域を専門とする医師が診療しますが、救急、総合外来では初診、予約外の患者をほぼ全員の医師が交代でプライマリケアを担い、必要性に応じてそれぞれの専門領域を持つ医師に相談しています。また当院で診断、治療が困難である患者は救急の程度に応じて、ドクターヘリや県防災ヘリ、あるいは救急車による救急搬送や専門施設への紹介を行っています。地域における医療は、診断・治療だけではなく、社会復帰に向けたリハビリテーション、さらに退院後のそれぞれの患者の生活環境に応じたフォローアップが重要で、そのためには医師だけではなく、看護師や社会福祉士、あるいはリハビリスタッフなど多職種連携によるチーム医療が必須です。当院でも退院後の在宅でのケアが継続してできるよう、訪問リハビリや通所リハビリ(デイケア)によるフォローアップのみならず、訪問看護や居宅介護支援事業による地域の介護支援にも力を入れています。こういった医療と密着した「ケア」はますます必要となっています。地域医療の大きな魅力は、患者個人だけではなく、家族あるいは地域全体を診ながら継続的かつ包括的な医療を担うことで患者中心の医療・ケアができることです。2025年問題と言われるように日本はこれまで世界中どこも経験したことのない超高齢化社会を迎えようとしており、地域ではすでにその対応が求められています。そしてそれはすぐに都市部でも大きな問題となります。すなわちへき地における地域医療とは今後の日本の医療の将来を見通すならば、ある意味「先端医療」と言えます。2017年度から19番目の専門医として「総合診療専門医」制度がスタートします。これからの日本および地域にとってどのような医師や医療スタッフがもとめられているか、実際の診療の見学のみならず当院の医師たちの話や療養病棟あるいはデイケアでの老人の介護の経験等を通して、地域における総合診療やへき地医療のあり方、魅力について考えてもらっています。ぜひとも目標を持って当院での実習に臨み、地域に密着した医療・介護を通してプライマリケアの面白さを体感して将来に生かしてほしいと思っています。