高崎総合医療センター
平成12年の医師法改正以降の大学による医学教育改革の自主的な取り組みとして、国内医学教育の標準化による医学教育の質を担保することを目的に、平成13年医学教育モデル・コア・カリキュラムの策定と定期的改定、そして平成17年診療参加型臨床実習開始前に備えるべき知識と技能・態度を評価する共用試験を全国的に実施。平成26年には診療参加型臨床実習のための医学生の医行為の水準が策定され、現在進行中ではありますが、令和2年からの取り組みとして臨床実習後の技法・態度を評価するPost CC OSCEの医学教育への正式導入に向けたトライアル、そして国際水準の医学教育の認証を目指した組織による全大学の受審が、今まさにリアルタイムで、日本全国的に展開されております。ここに示した医学教育における国家的事業は、それを運営する組織(文部科学省、厚生労働省、CATO、AJMC、JACME等)は違えども、一本化された「医学教育」の枠組みの中で運営されており、組織間の連携、そして協働により事業としての質は担保されております。社会的事業とした場合、特に教育には「質」を担保するためには「評価」が求められ、医師国家試験にのみ依存していたこの国で、人格形成が求められる医学教育を受ける医大生の教育成果の評価として、先に述べた国家的事業が提案され運営されるに至っております。これら評価に至るための教育本体の方略として、現在世界的に導入されているのがアウトカム基盤型教育(Outcome Based Education: OBE)であります。これは、医学であれば、体現者である医師や医療機関、そして医療について、社会が何をどのくらい求めているのか、といったことの研究と考察から構成されている医師プロフェッショナリズム(社会契約により供給される医師像、医療像)を目標とするものであり、医学の普遍的本質を骨格としつつも、時代や地域によって変遷するであろう民意(医療へのニーズ)を充分に取り込むことが可能であると推察できます。これに教育者、教育機関の意志(理念:限定的なプロフェッショナリズム)をしっかりと反映させるためには教育のマイルストーン(道しるべ)として社会に向けて提示する必要があります。大学ではアドミッションポリシーから始まり、カリキュラムポリシー、そしてディプローマポリシーなどがこれに相当します。現時点にあって医学教育とは医学部6年(卒前)と医師になってからの臨床研修2年(卒後)を包括した捉え方となっています。日本国中央政府にあって、これら医学教育は文部科学省と厚生労働省によって分割して管轄されているのは皆さん知っての通りだと思います。これら二つの省にある歴史的文化および構造の変革が求められており、戦後77年に至る「平和な国日本」にあって、社会保障は国民的最重要の関心事へと変遷しているが故の結果と捉えることができます。この国の小学生に問うたならば、将来なりたい職業の1位は常に「医者」であることが、それを示しております。それだけに重大な国民の関心事である社会保障、そして医療に対しても、現在、省庁縦割りの枠組みを超えた事業の良きモデルとして「良い医師を育成する」といった解り易い言葉で、人々が求める医師を育成する試みは継続されております。令和2年度より適用予定となっております医師臨床研修制度の見直しにあって、卒後臨床研修の到達目標と、卒前である医学教育モデル・コア・カリキュラムを構成するコンピテンシーは同一のものとなりました。卒前後にあって目標設定(アウトカム設定/コンピテント)は両者に整合性をみるに至ったのであります。今後にあってはこれら教育上の成果がいかに以後の医師キャリアプランの基盤を形成できるか、といったことが課題のように感じております。